タクミは五歳。権三郎が五十歳の時にうっかりこしらえてしまった息子です。ある日、二人は海に釣りに出かけました。
山田タクミは五歳。
山田権三郎が五十歳の時にうっかりこしらえてしまった息子です。
ある日、二人は海に釣りに出かけました。
日が暮れるまでがんばって、連れたのはカニが一匹だけ。
横で釣っていた知らないおじさんが、そんな二人に同情して言いました。
「それじゃ家族の分がたらんだろ。わしの魚を少し分けてやろうか?」
おじさんに、権三郎は答えます。
「ありがとうございます。けど、これで十分なんですよ」
そして後片付けをすますと、二人はおうちに帰りました。
「とうちゃん、カニっておいしいね!」
「そうだなあ。またカニ釣りにいこうな」
「うん! 今度もちゃんと二人ぶん釣れるといいね」
「今度も二人ぶん釣れるといいなあ。ほら、これまだ身が残ってるぞ。とうちゃんが取ってやろうな」
山田家は父子家庭でした。小さなアパートに親子二人きりで暮らしています。
だから、
権三郎が大きな左のハサミ。
タクミが小さい右のハサミ。
ほら、二人で仲良く食べられました。

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